魔法のかばん?

ベスト・エコバッグ・エバー

ほとんどの人に行きつけの床屋があるように、ほとんどの人に行きつけのスーパーがある。僕の場合は、Whole Foods Market(以下ホールフーズ)がそれだ。ホールフーズが好きなのにはいくつか理由があるが、一番は家から徒歩で行けるところだ。僕にとっての行きつけたりえるスーパーは、徒歩圏内のスーパーである。食料品を買うのに車とか、電車に乗っていくなんてわずらわしいことは極力避けたい。そりゃ時には遠出して韓国系スーパーにかつおぶしや納豆を買いに行ったりするが、たいていの料理ならホールフーズで対応できる。DAIKONやTOFUだって売っているのだ。

歩いて買い物に行く場合、買い物袋は重要だ。ホールフーズのレジでは有料の紙袋を買えるが、少額とはいえ毎週買うのはバカらしいし、自宅でゴミをまとめたりするのに役立つビニール袋と違って紙袋は再活用しづらい。ちなみにアメリカ人、というかアメリカに住んでいる人は、割と平気で毎回新しい紙袋を買う人が多く、日本人のエコバッグ普及率なんか知らないが、あんまりエコとかそういうことは考えてなさそうだ。合理的な彼らは、あるいはエコバッグを使うよりも、毎回紙袋を使うほうが環境にとって負担が少ないと考えているのかもしれない。EVと従来の自動車の二酸化炭素排出量は、製造時と走行時をトータルで考えれば大差なし、みたいな説と一緒で、実際のところどうなのかは知らないが。

はなしが脱線したが、どうせエコバッグを使うのなら、使い勝手のよいエコバッグを使いたい。柄がかわいいんだとか、小さく畳めるんだとか、そんなことはどうでも良い。こういったことは使っているうちに気にならなくなってくるし、見た目を買う動機にすると、2個目、3個目のエコバッグを買うというエセエコ野郎になってしまう(経験談)。でも最高の使い勝手のエコバッグなら、そうはならない。必要に迫られて2個目を買う日が来ても、同じものが欲しくなるだろう。そして最高の使い勝手をホールフーズが実現した。

ホールフーズのデザインチームは、オリジナルショッピングバッグの作成にあたり、レジで顧客が買い物をする様子を徹底的に観察した。顧客たちは、半数が数セントを支払い紙製のショッピングバッグを購入し、残りの半数は様々なショッピングバッグを組み合わせて使っていることに気がついた。紙のショッピングバッグの大きさは十分だが、水のボトルなど重量のあるものを購入した場合、2重にする必要があった。また多くの顧客が持参したショッピングバッグは自立しないタイプのもので、その不安定さゆえに実際の容量ほど多くのものを入れられないということを発見た。彼らはアメリカに流通するあらゆる商品を調べ、そのパッケージの大きさを測定し、自社の顧客の一回の購入量を分析することで、最適なサイズ-60cm*100cm*120cm-のショッピングバッグを作った。データの収集・分析には、2017年にAmazonの傘下に入ったことも寄与している・・・

というのは僕の空想だが、そんなストーリーがありそうなくらい、よくできたサイズ感なのである。縦横の面積は、一般的に流通している冷凍ピザのサイズと一致するし、マチには18個入りの卵のパッケージがピタリと収まる。あとは残ったスペースに野菜や缶詰を無駄なく詰め込む。ポケッタブル仕様でないぶん丈夫なので、重いものを入れても問題ない。車のトランクで揺られても、抜群のバランス感覚で立ち続けてくれる。

魔法は言い過ぎだけど、エコバッグ界のRIMOWAの称号を授けたい。