マニアナに向かって

ピピラ像前より

2023.11.23-11.26

グアナファトは、メキシコシティから北に1時間飛んだところにある。現地に暮らす知人を訪ねる旅行だったので、事前の下調べはほとんどやらなかった。メキシコの京都と呼ばれているらしい。ところでなんとかの京都という表現ってなんかの役に立つのだろうか?古い街並みなのだろうことは想像がついたが、それを表現したいのなら古都といえばいいのに。「ポーランドの京都」クラクフに行った時にも感じたが、京都と聞かされるより、中世の街並みが残る、とか言ってもらったほうがよっぽど正しくイメージできる。レオン空港からグアナファト市に向かう車の中で、サンノゼ市のハイウェイからみる景色とほとんど変わらない風景を眺めながらいつの間にか眠ってしまったが、目を覚ますとカラフルな街並みが広がっていた。やはり京都という言葉からイメージした風景とは違っていた、かろうじて盆地ではあったけど。治水のために地下に張り巡らされた、まるでアトラクションのようなトンネルを通って市内中心地に向かっていく。道はかなり狭く、ほとんどが一方通行のようで、方向音痴の私はこの街では暮らして行けそうにない。

グアナファト市自体は長野県松本市と同じくらいの広さなので、日本人の感覚からいえば結構大きい都市だが、ピピラ像の前から見渡せる範囲の街並みがグアナファトの中心地だとすると、観光客的観点からすればかなりコンパクトな街ということになる。何も知らない状態で街のもっとも有名なこの風景をみるとただのカラフルな建物の印象しか残らないが、一度街を歩いてある程度の情報を頭に入れてからみると、あああの建物が大学だなとか、そこの広場を通ってきたな、だとするとあれがさっき見たホテルだな、というのがすぐわかる。そして街の中で自分がいる場所がわからなくなったら、ピピラ像を探せばいい。彼との距離がどのくらいか、また彼の顔がどのような角度で見えるか、でおおよそ自分が街のどの地点にいるのかを知ることができる。歩き回ることが楽しい街だ。あるいは歩き回ることのできる街が、観光地としては楽しい街の条件なのかもしれない。城下町はみんな好きだし、アウトレットモールのような擬似的な街に人が集まるのは、買い物それ自体が目的ということ以上に、自分の足によるストップアンドゴーに楽しみを感じるからじゃないかと思っている・・・そういうわけで、久しぶりに街を歩いてフィルムカメラで写真を撮り、雑貨屋を見て回り、疲れたらカフェで休憩したりした。朝は遅くまでぐっすり眠り、夜は友人の部屋で、屋台で買ったタコスを食べた。特にハイライトのような瞬間はない。しかし常に充実感のようなものがあり、心地よい疲労があった。ガイドブックに印をつけながら歩く旅行も楽しいが、気の向くままにほっつき歩くことにはまた別の楽しさがある。

治安のいい街のようで、かなり遅くまで(21時とか)子供たちが遊ぶ声が聞こえてきた。彼らは石畳の路上でボールを蹴っていたが、ボールを蹴る子供をみたのはずいぶん久しぶりな気がした。音楽隊が街を練り歩き、その周りに人が集まって一緒に歌う。子供がベランダから顔を出して覚えたての歌を披露する。大人たちはパーティ好きで、週末街中ではなんらかのイベントが行われるという。その週末はワインフェスだった。道路に椅子を並べ、ワインを飲みながら音楽を鑑賞する。そして歩いて帰宅していく。街の中心と生活圏内とが近いからこその風景だった。

旅行から帰ってしばらくは、たいてい疲れてなにもしたくないという気になるのだが、今回はその反対で、ちょっと馬鹿っぽい言葉で言うと、元気がみなぎってきたのだった。興味をもちながらこれまで手をつけられていなかった新しいことをしてみたいと考えたり、長らく中断していたことを再開してみようかという気持ちになった。そしてなにより、今また旅行に行きたいと思っている。私にとって今回1番の収穫は、そういう種類の旅行もあるのだと分かったことだった。

 

食事

メキシコの人柄は日本人に親しみやすいもののように感じたが、同じことは食事についても言えるような気がする。屋台で買ったタコスやケサディージャ、ホームメイドのミチェラダ。ダムのほとりで買ってもらった、Guacamayasという豚の皮を揚げてチップス状にしたものにかなりハマった(Guacamayasというのはインコの名前。かなり限定された地域のローカルフードらしく、隣町でもこの食べ物のことを知らない人は、インコを揚げてるのかとギョッとすると聞いた)。醤油とサルサの味が似ているとは言わないが、塩と脂濃さの加減が日本人の味覚と近いのではないか。

 

服装

この時期のメキシコは、Tシャツにブルゾン、ジーパンという格好でちょうど良かった。朝晩で寒暖差があるので、脱ぎ着できるほうがいい。旅行の時ポーチを持ったり、変にポケットがたくさんついた服を着がちだが、結局どこに何をしまったかわからなくなる。ジーパンのポケットは上向きで物が落ちる心配も少ないし、そこにケータイとパスポート、フィルムカメラだけ入れて行動するのは気持ちが良かった。

 

おみやげ

日本贔屓と思われる(店のあちこちに広島カープの写真やカレンダーが貼ってあった。日本語の注意書きもあり、多分日本人観光客もよく来るのだろう)店主のいる店で、湯呑みと、飲む習慣はないがテキーラボトルを買った。それに帰りの空港でテキーラ(KREVAがGQの企画で紹介してたやつ)も。